(1)授業におけるコンピュータ活用にかかわる調査から見えてきたこと 1/12
次へ
川崎市の授業におけるIT活用の現状と教員の意識を把握するために、アンケートを各学校の「情報教育学校担当者」(教諭)に対して実施した。本調査は、「情報教育学校担当者」から見た校内のコンピュータ活用の現状及びコンピュ−タ活用に関する個人の考えの2点に視点をおいた。
[アンケート回収学校数]      2003.5.21

校種 校数
校種 校数
(1) 小学校 103 (4) 高校(定) 5
(2) 中学校 49 (5) 聾・養護学校 3
(3) 高校(全) 5
合計 165

校内のコンピュータ活用の現状

質問1:所属校の教科等の授業におけるコンピュータ活用の全体的な現状につい
    てお答えください。もっとも、あてはまるものを一つお答えくださ
    い。

全体的な割合
全体的な割合
グラフ1

 授業における活用に関して、「活用していない」「活用は少ない」で67%を占めており、「授業におけるコンピュータの活用」が少ないことがわかる。

 なお、このデータは、全校種ほぼ同程度の割合であるので、ひとまとめにしたグラフである。

 次にその理由を聞いた。

質問2:質問1で「活用していない」「活用は少ない」を選んだ学校で、その原
    因にあてはまるものすべてをお答えください。(複数回答)

表3

項目 校数
1 教材準備などに時間が必要 58 54%
2 コンピュータは難しい・特別な技術(スキル)が必要 47 44%
3 コンピュータのトラブルに対応できない 45 42%
4 利用できるコンピュータが少ない 44 41%
5 ソフトを購入する予算が無い 40 37%
6 具体的な活用法が浮かばない 33 31%
7 活用事例集がそのまま使えない 27 25%
8 コンピュータが嫌い 11 10%
9 その他 9 8%
「活用していない」「活用は少ない」理由は、「教材準備などに時間が必要」が54%で半数以上を占めており、続いて「コンピュータは難しい・特別な技術(スキル)が必要」が44%。それに関連して「コンピュータのトラブルに対応できない」が42%の順で挙げられている。また、「利用できるコンピュータが少ない」41%、「ソフトを購入する予算が無い」37%など、機器に関する環境整備の問題も現状としてある。

 さらに「具体的な活用法が浮かばない」が31%であることも見逃せない。

質問3:所属校で、「校務でコンピュータを利用している先生方のおよその人数
    の割合」と「授業にコンピュータを活用できる先生方のおよその人数の
    割合」をお答えください。

校務・授業利用の人数の割合
校務・授業利用の人数の割合
グラフ2
「授業での利用」よりも圧倒的に「校務での利用」が多くなっている現状が見えてきた。
次に、コンピュータをどの授業で活用しているかを質問した。

質問4:所属校の教科等の授業におけるコンピュータ活用の頻度についてお答え
    ください。

年間計画に位置付けて活用している教科(小学校101校中の割合)
年間計画に位置付けて活用している教科(小学校101校中の割合)
グラフ3
年間計画に位置付けて活用している教科(中学校47校中の割合)
年間計画に位置付けて活用している教科(中学校47校中の割合)
グラフ4
コンピュータ活用の頻度を「年間計画に位置付けて活用している」という条件を付けると、小学校では「総合的な学習の時間」が76%と高く、以下、「社会科」「図工」の順であるが何れも低く、他は一桁の値である。
中学校においては、「技術・家庭科」が84%、以下、「選択」「総合的な学習の時間」の順であり、小学校同様に教科等での活用が少ないことがわかる。

コンピュ−タ活用に関する個人の考え

質問5:どのような授業(学習)にコンピュータが活用できると思いますか。あ
    てはまるものすべてをお答えください。(複数回答)

コンピュータの活用ができると思う教科
グラフ5
活用内容
グラフ6

 コンピュータの活用ができると思う教科等を聞いたところ、グラフ5から「総合的な学習の時間」「社会科」「理科」の順で挙げられ、その活用内容は「調べ学習」「発展学習」「問題解決学習」「補充学習」の順となり、中でも「調べ学習」が8割近くを占めている。

 次に、児童生徒にどのような力の育成や定着にコンピュータが活用できると思うかを質問した。

質問6:児童生徒のどのような力の育成や定着にコンピュータが活用できると思
    いますか。あてはまるものすべてをお答えください。(複数回答)

活用できると思われる点
グラフ7

 「情報活用能力」(87%)をトップに 「興味・関心」(82%)と続き、3番目にインターネット、イントラネットのネットワーク活用において必要な「情報モラル」(58%)が挙がっている一方で「創造力」「判断力」「思考力」という力の育成にコンピュータが活用できるという回答が30%を切っていることが注目される。

質問7:授業へのコンピュータの活用について、あなたの考えをお書きくださ
    い。(自由記述)

  • 調べ学習の結果を児童生徒は、コピーアンドペーストしただけで終わってしまう可能性がある。コンピュータの活用の仕方とその目的を教員がしっかり計画することが必要である。
  • 調べ学習においてインターネットへの依存が懸念される。
  • 実体験の不足が懸念される。
  • 授業での活用のための教材づくり研修が必要である。
  • 校内LANでインターネットが普通教室等でつながっているとよい。
  • 回線速度が遅く使えないときがある。
  • 十分使用するには、ハード、ソフトともに不足している。
  • 情報教育専任の人がほしい。

考察

これまでのアンケート結果から以下のように考察した。
質問1「所属校の教科等の授業におけるコンピュータ活用の全体的な現状」は、「活用していない」「活用は少ない」で約三分の二以上(65%)を占めていることから、低いと言わざるを得ない。
次に質問2でその理由を聞いたところ、半数以上(54%)が「教材準備などに時間が必要」になると答えており、コンピュータ操作技術の習得(44%)より上位を占めている。一から自分で教材を作成することよりも、すでにある教育用コンテンツをどのように利用するかの視点が必要である。
そのためには、“川崎市教育情報ネットワーク(Kawasakisi Educational Information System-Network、略称KEINS-NET(ケインズネット))”(市立学校間イントラネット)をはじめ、ポータルサイトと呼ばれる各種コンテンツ検索の入口をたよりに、どこにどういうコンテンツがあるかという存在そのものを理解することが必要である。併せて、そのコンテンツの良さを評価でき、活用する力が大切になると考える。
また、「コンピュータのトラブルに対応できない」ということからは、児童生徒をコンピュータ室に連れて行けないという、心理的な壁もその裏にあるように思われる。
一方、質問2は、複数回答であるにもかかわらず、「利用できるコンピュータが少ない」(41%)あるいは、「ソフトを購入する予算が無い」(37%)などの物理的な面(環境整備)が少ない回答になっていることから、今必要とすることは、教員のIT活用の意識の高まりと手軽に短時間で準備できることが重要な要素であると考える。
質問3で「『校務』であるいは、『授業』でコンピュータを利用している先生のおよその人数の割合」を聞いたところ、「校務」で80%以上使っているが92校、「授業」で80%以上使っているが19校であることから、圧倒的に「校務」での利用が多いことがわかる。これまで当センターが行ってきた情報教育関連の研修では、ITを操作できる教員の育成に重点を置いてきた。Windowsの操作、Word/Excel/PowerPoint/電子メールの利用/Webページ作成、等々である。「校務での活用」に重点をおいてきた、その結果を反映したものと思われる。
(一部、PowerPointの研修については「授業」を意識した研修として位置付けた。)
平成14年度、本市で“操作できる”教員が94.2%(文部科学省の情報教育に関する実態調査)になった今、それを100%にするとともに、“授業で活用できる”教員(「指導できる教員」)の育成の段階になってきたと言える。
質問4「所属校の教科等の授業におけるコンピュータ活用の頻度」については、平成12、13年度の学習指導要領移行期からITの活用が期待されていた「総合的な学習の時間」が小学校で76%と高く、その活用が年間計画に位置付けられている。一方、中学校における専門教科を除き、「選択教科」、「総合的な学習の時間」等、教育の情報化の過渡期における本市において、授業へのIT活用頻度は高いとは言えない。
質問5「どのような授業(学習)にコンピュータが活用できると思いますか(複数回答)」では、「調べ学習」が80%と期待が大きいことがわかるが、「調べ学習」でのIT活用では、その目的を明確にすることが大切であると考える。
質問6「児童生徒のどのような力の育成や定着にコンピュータが活用できると思うか」については、 3番目の「情報モラル」であるが、その教材はまだ乏しいと言えよう。このことを踏まえ、教員の情報モラル向上に関する研修と児童生徒への情報モラル指導のための教材開発が必要である。現在、長期研修員が「情報モラルの育成を目指した指導資料の作成」というテーマで研究を行っている。また、今年度、「情報モラル・危機管理」という研修講座を開設した。
 一方で、「創造力」「判断力」「思考力」の値が低いことから、児童生徒が自ら考え、判断し、創り上げていく活動でコンピュータの可能性を見いだせていないことも現状として浮かび上がる。
この調査の目的は、本研究のねらいである「IT活用方法の開発」に生かすことである。そこで考察から開発に関して配慮すべき事項を次のようにとらえた。

考察から見えてきたIT活用方法の開発で配慮すべき事項

1  すぐに利用できるコンテンツ(教材)
2  授業におけるIT活用で利用できるインターネット上のコンテンツの存在の理解と
  コンテンツの良さを評価でき、活用できる力
3  教員の授業におけるIT活用の意識の高まり
4  手軽に短時間で準備ができるIT活用方法
5  教員が校務で日常的に利用しているアプリケーションソフトウェアの活用
6  情報モラルの指導のための教材
7  ITを活用するための授業設計

なお、この考察の内容は、前述の「主題設定の理由(2)」のIT活用の問題点を裏付けるものとなっている。
次へ